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肉離れを追う② 筋線維長と生理学的断面積

今回も肉離れについて。

 

筋の構築特性として、

1.人体の骨格筋の中でも羽状筋は5°-25°の羽状角を持つ筋肉。

2.羽状角は45°を越えると生理学的筋断面積が増えても筋力(筋の伝達効率)が低下する。 

ということが前回わかりました。

 

今回は「筋線維長(筋全体のサイズに対する筋線維の長さ)」「生理学的断面積」についてみていきたいと思います。

前回お出しした筋の構築特性の上肢・下肢の一覧表。そこから多くのことを学べます。

最初は羽状角が載っているので、各筋肉の大体の角度を知りたく見ておりました。

 

実際に筋機能を考えたときに、もっとも重要なパラメーターは、

「筋線維長」その筋が持っている「可動範囲」と、

「生理学的断面積」その筋が発揮しうる「パワー」となります。

 

例に挙げてみると、

筋線維長:長い(可動範囲広い)、生理学的断面積:小さい(パワー小さい)=縫工筋・薄筋・半腱様筋等

筋線維長:短い(可動範囲狭い)、生理学的断面積:大きい(パワー大きい)=ヒラメ筋等

 

なるほどなるほど。なんとなくイメージがつきます。

 

特にヒラメ筋なんかは、狭い可動範囲の中で、数ある骨格筋の中でもトップクラスのパワーを発揮します。

ただヒラメ筋は単関節筋なので、実際に損傷するのは2関節筋である、腓腹筋です。

 

そこで、テニスレッグの好発部位「腓腹筋内側頭」のパラメーターをみてみると、

生理学断面積:大きい、羽状角:小さい(筋発揮にロスが少ない:前回ブログ参照)、筋線維長:やや短い。

 

ふむふむ。

 

肉離れが最も多く発生する「ハムストリングス」で同じような条件はないかな?

(断面積・羽状角・筋線維長の大きい、小さい、短い、長いなどはこの3筋を比較して)

 

生理学的断面積

大腿二頭筋長頭:11.33±4.75➡やや小さめ

半腱様筋:4.82±2.01➡小さい

半膜様筋:18.40±7.53➡大きい

 

羽状角(羽状筋:おおよそ5~25°の間)

大腿二頭筋長頭:11.58±5.50➡小さい

半腱様筋:12.86±4.94➡やや小さい

半膜様筋:15.09±3.43➡普通

 

筋線維長(筋自体の長さ)

大腿二頭筋長頭:9.76±2.62(34.73±3.65)➡短い

半腱様筋:19.30±4.12(29.67±3.86)➡長い

半膜様筋:6.90±1.83(29.34±3.42)➡短い

 

これらを見ると半膜様筋が一番近いですね。

ただ大腿二頭筋も近いといえば近い。

 

ここで大前提として、筋の機能を考えるときに筋の構築特性だけでは語れず、モーメントアームについての理解も当然として必要になってきます。

 

こうなってくると物理の世界ですね…。

 

 

前回・今回とマニアックに筋の構築特性についてみてきましたが、私たちの仕事は身体を修復する大工さんみたいなものだと思います。

 

特に鍼灸師は筋肉に対するアプローチ機会が多いです。

 

その中で、人体の筋骨格というのは大体の素材の配置は一定になっているはずです。

 

経験のある大工さんは建てられた家を外からみてどこにどの寸法でどう鉄骨等が配置されているのか?

 

大体をみてわかっていらっしゃると思います。

 

家を修復する際にどこが傾いているのか?明らかにしてどのような配置にすれば正しく元通りになるのか?

 

我々も同じだと思います。 

 

患者様の体を外から見て、どの筋がもともとどのような素材で、どうなっているのか?

 

傾きに対して鍼や灸というツールを使って修復していく。

 

そんな仕事だと思っております。

 

 

もちろん人体全体を診ていくためには、土台となる骨格に対する理解も必要です。

 

まだまだ勉強あるのみです。

 

患者様の期待にこたえられるように日々勉強に励みたいと思います。